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浦和地方裁判所 平成11年(行ウ)25号 判決

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

1  請求の趣旨

1  別紙物件目録記載の土地について、浦和市長の指定処分が存在する建築基準法

(ただし、昭和二六年法律第二二〇号による改正前のもの。以下「法」という。)

四二条二項の規定に基づく道路であることを確認する。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二 請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  浦和市α八二番及び八三番の各土地は、昭和二四年当時、それぞれ一筆の国有地であったが、右両土地のほぼ中央に、幅員一・八メートルの別紙物件目録記載の土地(以下「本件私道」という。)があり、本件私道の北側に三軒、南側に三軒の借地人が居住する建物があり、借地人らは、付近住民と共に本件私道部分を道路として利用していた。その後、別紙図面二のとおり、昭和二四年から昭和二五年にかけて、本件八二番土地は同番一ないし五に、本件八三番土地は同番一ないし五に、それぞれ分筆され、各借地人に払い下げられた。

2  法四二条二項は、昭和二五年一一月二三日時点において、現に建物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものは、建築基準法上の道路とみなすと定め(以下、右規定により建築基準法上の道路とみなされる道を「二項道路」という。)、右特定行政庁であった埼玉県は、昭和二六年七月三一日、同県告示第三五〇号により幅員四メートル未満、一・八メートル以上の道を二項道路とする旨の指定処分を行ったが、その後、浦和市に建築主事が置かれるようになったことから、同市は、昭和四六年三月三一日、同市建築基準法施行細則(以下「浦和市施行細則」という。)を公布し、同細則八条により、①一般の通行の用に使用されている道で、②幅員が一・八メートル以上四メートル未満のもので、③側溝その他適当な標識によりその境界が明確な道については、これを法四二条二項の規定により同条一項の道路とみなす旨を定め、これに該当する道を一括して、二項道路とする指定処分(以下「本件指定処分」という。)をした。その後、浦和市施行細則は、昭和四六年浦和市規則第三八号により廃止され、新たに、同細則が制定され、右細則は、昭和五四年に改正されたが、既にされている手続その他の行為は、右廃止、改正によっても、その手続その他の行為とみなされた。

3(一)  本件私道は、前記のとおり、一・八メートル以上の幅員があり、一般公衆用の道路として使用されていたものであり、原告は、昭和三七年九月二一日、その所有する八二番二の土地(以下「原告所有地」という。)に建物を建築する際、本件私道を二項道路として建築確認申請をし、B及びCは、昭和五四年四月一七日、Bの所有する八三番一及び八二番五の土地(以下「B所有地」という。)に建物を建築する際、建築主をCとし、本件私道を二項道路として、建築確認申請をし、Aは、昭和五四年六月二五日、その所有する八二番一の土地(以下「A所有地」という。)に建物を建築する際、本件私道を二項道路として、建築確認申請をし、それぞれ建築確認を得て、居宅を新築した。

(二)  本件私道の幅員は、平成六年一月時点では、一・八メートルに満たない部分があるが、浦和市が本件指定処分をした当時は、右部分も含めて本件私道の全体が一・八メートルの幅員を有していた。昭和四〇年ころから昭和五五年ころにかけて、本件私道の両側の土地を所有していたD、E及びAが、それぞれ自己の所有する土地の塀を、約一五センチメートルないし三〇センチメートルくらい本件私道にせり出して築造したため、従来の幅員より狭い幅員の部分が出現した。

4  右のとおり、本件私道は、本件指定処分当時は、法四二条二項及び浦和市施行細則八条の各要件を満たしている二項道路であり、被告において、二項道路であるとの指定処分をしたにもかかわらず、被告は、原告とAとの間の訴訟(当庁平成七年(ワ)第九三八号通行権確認等請求事件。以下「別件訴訟」という。)におけるAの申立てにかかる調査嘱託に対し、平成七年一一月七日、浦和市建築主事が、以前に本件私道を二項道路と認定したことはなく、現在も二項道路と認定していないこと、本件私道の一部分についても、二項道路と認定したことはない旨の回答(以下「本件回答」という。)し、二項道路であることを否定した。

5  よって、原告は、被告に対し、本件私道が法四二条二項の規定に基づく道路であることの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1及び2のうち、本件私道の幅員が一・八メートルであること及び被告が、浦和市施行細則の施行に際して、本件私道について、二項道路としての指定処分をしたことは、否認し、その余の事実は、認める。

被告は、浦和市施行細則八条に該当する道については、二項道路としての一括指定処分をしたが、本件私道については、浦和市建築指導課が、平成六年一月五日及び同九年一二月一八日に調査した際、本件私道の幅員は、一・六五五メートルであり、本件私道の位置、形状に格別の変化がないことにかんがみると、本件指定処分当時については、二項道路としての要件を具備しておらず、被告が、本件私道について本件指定処分をしたことはない。

2  請求原因3(一)は、認め、同3(二)のうち、本件私道の幅員は、平成六年一月時点では、一・八メートルに満たない部分があることは、認め、その余の事実は、否認する。

3  請求原因4のうち、別件訴訟において、Aの申立てにかかる調査嘱託に対し、平成七年一一月七日、浦和市建築主事が、本件私道については、以前に二項道路と認定したことはなく、現在も二項道路と認定していないこと、本件私道の一部分についても、二項道路と認定したことはない旨の回答したことは、認め、その余の主張は、争う。

第三証拠

本件記録中、書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  本件証拠(甲第一号証、第三号証ないし第九号証、第一七号証、第一八号証、乙第三号証の一ないし第六号証、第一〇号証の一ないし四及び第一二号証)、当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。

1  本件私道の現況は、別紙図面一記載のとおり、本件私道の東西は、浦和市道と接しており、原告所有地は、本件私道の北側に面しており、その東側はA所有地に、その西側は、E所有の八二番六の土地(以下「E所有地」という。)にそれぞれ接し、また、本件私道南側は、F所有の八二番三の土地(以下「F所有地」という。)、D所有の八二番四の土地(以下「D所有地」という。)、B所有地となっている。浦和市建築指導課が、平成六年一月五日、本件私道にBする現地調査(以下「平成六年現地調査」という。)をしたところ、別紙図面一記載g及びfの各点を直線で結んだ部分(以下「gf間」という。)における本件私道の幅員は一・六五五メートルであり、同図面記載h点とF所有地間の本件私道の幅員は一・七一〇メートルであり、同図面記載a及びmの各点を結んだ部分における本件私道を含む道路幅員は三・八四〇メートルであった。また、土地家屋調査士Gが、同年二月五日、本件私道の現況を測量(以下「平成六年測量」という。)したところ、gf間は一・六四メートル、別紙図面一記載h点とF所有地間の本件私道の幅員は一・六九メートル、同図面記載j及びaの各点を直線で結んだ部分における本件私道を含む道路幅員は二・八五メートルであった。さらに、浦和市建築指導課が、平成九年一二月一八日、本件私道について現地調査(以下「平成九年現地調査」という。)をしたところ、別紙図面一記載のgf間における幅員は一・六五五メートルであり、原告所有地とD所有地との間における本件私道の幅員は一・三八メートルであり、D所有地とA所有地との間における本件私道の幅員は二・三八メートルであり、A所有地とB所有地との間における本件私道の幅員は一・七三メートルないし一・七二メートルであった。

2  法四二条二項所定の道路にBする現地調査については、鳥取県土木部長からの照会に対する建設省の回答(昭和三九年一一月二六日付け住指発第一九二号)において、「確認は、必ずしも、あらかじめ現場確認を行うことを義務づけるものではなく、提出された確認申請図面に道路が明示され、これに基づいて審査したものであれば、確認は有効である。」との回答がされたことから、浦和市においては、建築確認の審査に当たって、昭和五四年ころは、建築確認の際に、提出された書類のみを審査し、申請書に二項道路等の記載があれば、現地調査等をする等の裏付けをすることなく、建築確認を行っており、また、建築確認の審査において、道路認定にBする記録を残すこともなかった。しかしながら、昭和六〇年ころ、建築家屋の近隣住民から、浦和市に対し、道路の中心線から二メートル後退させないで建築をすることに対する苦情が出されたことから、浦和市においては、建築確認の審査に際して、法四二条所定の道路を具備しているか否かについて、現地調査をするようにその取扱いを変更したが、建築確認の申請全件について、右現地調査を行うことは、実際上困難であることから、問題のありそうな事案についてのみ現地調査等を行っているのが実情である。

3  本件私道が開設された時期は、不明であるが、極東米軍が昭和二二年一一月八日に撮影した航空写真には、既に本件私道が撮影されているが、その幅員は不明である。

原告が、昭和三五年一〇月五日、原告所有地を購入した当時、本件私道等の現状は、植え込み及び板塀で囲まれていた。すなわち、A所有地及びF所有地と本件私道との境界は植え込みで、原告所有地、D所有地、E所有地及びB所有地との本件私道の境界は板塀で区切られていた。その後、昭和四〇年ころ、A所有地と本件私道との境界がブロック塀に変更され、D所有地と本件私道との境界が屋根付の石塀に変更され、同四四年ころ、F所有地上の居宅の新築に際し、本件私道との境界はブロック塀に変更され、同四七年ころ、E所有地と本件私道との境界がブロック塀に変更された。

4  浦和市は、当時、いわゆる角地については、法の規定する道路に該当しない場合にも、建物の改築等の際には、通行の便宜上、いわゆる隅切りを右角地の所有者に対し事実上要求していたことから、B及びCが、B所有地に居宅を建築するに際して、浦和市は、B及びCに対して、本件私道に接する土地部分の分筆登記及び地目変更を事実上求め、Bは、昭和五四年三月一日、B所有地のうち、八二番五の本件私道に接する土地部分を八二番八として分筆し、地目を公衆用道路として、その旨の登記手続を終了した。

B及びCは、昭和五四年三月六日、浦和市に対し、建築主をCとして、右土地上に専用住宅を新築する旨の建築計画概要書を提出して建築確認申請をしたが、その配置図に、本件私道の幅員一・八〇〇メ―トル、申請建物の建築後退線から本件私道の中心線まで二・〇〇〇メートル、本件私道が法四二条二項道路で、いわゆる隅切りを行う旨記載し、さらに隅切りの位置、形状を示した申請(甲第五号証一ないし八、乙第五号証)をした。浦和市建築主事は、同年四月一七日、建築確認をした。

右居宅の建築の際、B及びCは、これまで設置されていたフェンスを撤去して、本件私道の中心線から二メートルの位置である別紙図面一記載a及びbの各点を直線で結んだ箇所にブロック塀を設置した。

5  Aは、A所有地の上に専用住宅を新築することとし、昭和五四年六月四日、浦和市に対し、建築確認申請書(甲第六号証の一ないし一〇、乙第六号証)を提出し、本件私道の幅員一・六〇〇メートル、申請建物の敷地の道路境界線から本件私道の中心線までの幅員二・〇〇〇メートル、本件私道の中心線から法四二条二項による境界線までの幅員各二・〇〇〇メートルと記載した配置図(甲第六号証の一〇、乙第六号証)を添付したが、浦和市建築指導課長Hから、本件私道は、法四二条所定の道路でないので建築確認をすることはできないとの指摘を受けた。右建築を急いでいたAは、H課長の指示に従って、浦和市道に接する箇所については、いわゆる隅切りを行い、かつ、浦和市開発行為等にBする協議基準第四章1建築物等の後退に従い、後退用地部分の分筆登記及び地目変更を確認時までに済ませることを誓約する旨を記載した誓約書(甲第六号証の三)を差し入れ、昭和五四年六月一四日、昭和五三年四月一二日にA所有地から分筆した浦和市道に接する八二番七の土地について、地目を公衆用道路とする旨の登記手続を了した。浦和市は、昭和五四年六月二四日、Aに対する建築確認をした。

Aは、右居宅の建築に際し、本件私道の中心線から二メートルの位置である別紙図面一記載k及びmの各点を直線で結んだ箇所にブロック塀を設置した。

Aは、その後、同年一一月二二日、A所有地から本件私道に接する八二番九土地を分筆し、これを公衆用道路とする旨の登記手続を了した。

6  A、B、E、F、D及び原告は、H課長の指導により、昭和五四年七月一七日及び同年八月四日、浦和市役所会議室に集まり、本件私道に接する土地所有者が、本件私道の中心線から二メートル後退した土地を分割し、本件私道を含めた道を法四二条二項の道路とするなどの協議を行ったが、結局、右協議は整わなかった。

7  浦和市建築指導課長Iは、平成五年四月ころ、近隣住民から、A所有地の東側に接する浦和市道の幅員が四メートルないことから、右浦和市道に接するAの塀の後退を求める要望が出された際、本件私道が二項道路であるか否かという争いがあったことを知った。

I課長が、同月二二日、現地調査をした結果、右浦和市道は二項道路であることが判明したので(乙第二号証の一及び二)、Aに対し、右塀の後退を求めたところ、同人はこれを承諾したが、本件私道については、昭和五四年の建築確認の際、幅員一・六メートルとして建築確認を受けているので、二項道路ではないとして、本件私道部分については、昭和五四年当時の状況に復する等と主張したことから、本件私道が二項道路であるか否かという争いが生じたため、浦和市建築指導課は、平成六年一月五日、本件私道について現地調査をしたところ、gf間部分における本件私道の幅員は一・六五五メートルであり、原告所有地とF所有地との間の部分における本件私道の幅員は一・七一メートルであり、原告所有地とD所有地との間の部分における本件私道の幅員は一・三五〇メートルであり、本件私道と本件私道東側の浦和市道の交差部分における本件私道の幅員は三・八四〇メートルであった(乙第三号証の一及び二並びに第一一号証の一、平成六年現地調査)。また、G調査士が、同年二月五日、本件私道について現地調査をしたところ、別紙図面一記載のgf間部分における本件私道の幅員は一・六四メートルであり、同図面記載h点付近における本件私道の幅員は一・六九メートルであり、原告所有地とD所有地との間における本件私道の幅員は一・二七メートルないし一・三五メートル、D所有地とA所有地との間における本件私道の幅員は一・四三メートルないし一・五三メートルであった(別紙図面一、平成六年測量)。浦和建築主事が、平成九年一二月一八日、再度、本件私道について現地調査をしたところ、gf間における幅員は一・六五五メートルであり、原告所有地とD所有地との間における本件私道の幅員は一・三八メートルであり、D所有地とA所有地との間における本件私道の幅員は二・三八メートルであり、A所有地とB所有地との間における本件私道の幅員は一・七三メートルないし一・七二メートルであった(乙第四号証の一及び二並びに第一一号証の一、平成九年現地調査)。

8  Aが、平成六年一月ころ、前記のとおり、原告に対し、本件私道は、二項道路ではないので昭和五四年の新築以前に存したブロック塀の位置まで戻すと通知したため、原告は、A所有地部分のコンクリートブロックの花壇等は原告の通行権を侵害する等として、Aを被告とする別件訴訟を提起したが、平成八年一一月一日に開かれた第一三回口頭弁論期日おいて、①原告と被告は、本件私道をめぐる紛争を本件和解により解決し、今後は円満な近隣関係を築き上げていくことに努める、②本件私道の幅員一・八〇メートルを維持するため、被告は、本件私道の中心線より九〇センチメートルの位置を限度として、浦和市道に存する高さ(一九〇センチメートル以内)に合わせてブロック塀を設置することとし、原告はこれに異議を述べない。③被告は原告に対し、右範囲内の通行を妨害しない、④本件私道について、道路関係土地所有者全員が幅員を四メートルとするため前記中心線よりそれぞれ各二メートルとすることに合意した場合には、被告もこの合意に同意するとともに、前項のブロック塀についてはこの内容に反しないようにするため必要な措置を講じる、⑤なお、本件私道が建築基準法四二条二項による道路であることが確定された場合においても、被告は右と同じ措置を講じる旨の裁判上の和解(甲第八号証。以下「本件和解」という。)をした。

9  平成八年一一月ころ、Aは、別紙図面一記載i及びj点を直線で結んだ本件私道に接した部分にブロック塀を設置し、平成九年八月ころ、Bは、本件私道に接した部分にブロック塀の前に花壇を設置し、同年九月五日、B所有地である八二番五の土地(ただし、平成九年七月二九日付けで八二番八の土地の分筆を錯誤とした後のもの)及び同人所有の八四番八の土地を、八三番一の土地に合筆した。

二  浦和市が、同市施行細則を定め、一般公衆の通行の用に供されている道で、幅員一・八メートル以上四メートル未満のもので、側溝その他適当な標識により、その境界が明確な道を一括して二項道路とする旨の本件指定処分をしたことは、当事者間に争いがない。原告は、本件私道についても、本件指定処分を受けたと主張し、被告は、本件指定処分当時、本件私道は二項道路としての幅員の要件を具備していないと主張する。

右認定した事実によると、本件私道部分は、昭和二二年一一月八日当時から存していたようであるが、埼玉県及び浦和市が、本件私道が二項道路に該当するか否かについて現地調査等を実施した旨の記録は存しないところ、B及びCは、居宅を新築する際、浦和市に対し、昭和五四年四月六日、申請建物の建築後退線から本件私道中心線までの幅員二・〇〇〇メートル、本件私道部分の幅員が一・八〇〇メートルであるとした建築確認申請書を提出し、浦和市は、B及びCの右申請について、同年四月一七日、建築確認をしたが、Bは、浦和市が、当時、いわゆる角地については、法の規定する道路に該当しない場合にも、建物の改築等の際には、通行の便宜上、いわゆる隅切りを右角地の所有者に対し事実上要求していたことから、B及びCが、B所有地に居宅を建築するに際して、B及びCに対して、本件私道に接する土地部分の分筆登記及び地目変更を事実上求めたため、右建築確認申請をするに先立って、B所有地を分筆するとともに、その地目を公衆用道路としての登記を経由した上で、B及びCが、建築主をCとして、本件私道部分について幅員一・八〇〇メートルとする建築計画概要書を提出したことに照らすと、B及びCが、本件私道が二項道路としての指定処分を受けていたとして建築確認申請を行ったと認めることは相当ではないし、Aは、本件私道の幅員を一・六〇〇メートルとする建築確認申請を提出しており、原告を含む本件私道に隣接する土地所有者であるA、B、F、D及びEは、昭和五四年七月一七日及び同年八月四日、建築確認申請をするに当たって、本件私道が法四二条所定の道路としての取扱いを受けることができるように、本件私道の中心からニメートル後退すること等を内容とする協議を行ったこと、また、浦和市建築指導課及びG調査士が、本件私道を現地調査したところ、本件私道の幅員は二項道路としての幅員の要件を満たしているとは認められなかったこと、原告は、別件訴訟において、本件私道の幅員として一・八メートルを確保することを内容とする本件和解をしたこと、本件私道の状況は、塀などの改築がされた経緯があるとしても、右改築により本件私道の幅員が狭められたとは認められないこと等の事実を合わせかんがみると、本件私道が、本件指定処分当時、浦和市施行細則に定める二項道路としての幅員の要件を具備していたと認めることは困難であり、したがって、被告が、本件私道について、本件指定処分を行ったと認めることはできないし、かかる事実を認めるに足りる証拠も存しない。

この点、原告は、被告は、本件私道が、二項道路に該当するとして、原告、B及びC、A、各々に対する建築確認をしたのであるから、本件指定処分があったというべきであると主張する。確かに、原告が、昭和三七年九月二一日、被告に提出した建築確認申請書添付のJ邸新築設計図の配置図には、本件私道については私設道路、建築基準法施行以前の道路、幅員「4」と記載されているが(甲第四号証の一及び二)、右図面の表示単位は、必ずしも明確ではなく、仮に幅員が四メートルであることを示すのであっても、B及びCやAが提出した建築確認申請の記載によると、本件私道の幅員は四メートルに満たないし、当時の浦和市における建築確認の審査の実情にかんがみると、右記載が本件私道の幅員を正確に反映したものであるとは認め難い。また、B及びCが、Cを建築主として、提出した建築確認申請には、本件私道について幅員一・八〇〇メートルと記載された図面が添付されているが、本件私道の幅員に関する右記載は、専用住宅を新築するために記載されたものであり、さらに、昭和五四年当時における浦和市の審査の実情にかんがみると、原告の場合と同様、本件私道の幅員に関する右記載がされていることをもって、直ちに本件私道の幅員が一・八〇〇メートルであると認めることはできないし、B及びCは、前記認定のとおり、右建築確認申請をするに先立って、B所有地を分筆し、地目を公衆用道路としての登記を経由した上で、Cを建築主として、右建築確認申請を行ったのであるから、B及びCが、本件私道が二項道路としての指定処分を受けていたとして、建築確認申請を行ったと認めることは困難であるといわざるを得ない。浦和市は、Aから提出された建築確認申請については、本件私道の幅員が一・六〇〇メートルと記載されていたことから、本件私道は二項道路と認めることはできないとしたが、Aが、浦和市の指導に応じて、浦和市開発行為等に関する協議基準に従い、後退用地部分の分筆登記及び地目変更をすることを確約する旨の誓約書を差し入れたので、法の定める接道要件を具備したものとして、建築確認を行ったのであるから、本件私道が二項道路に該当するとの判断の下に建築確認を行ったのでないことは明らかである。右のとおり、浦和市の原告、B及びC、A、各々に対する建築確認は、いずれも本件私道が本件指定処分による二項道路であることを前提として行ったとは認められないし、浦和市が右建築確認を行ったという事実をもって、本件指定処分当時、本件私道が、二項道路としての幅員の要件である一・八メートルの幅員を有する道であったと認めることはできない。したがって、原告の右主張は、採用できない。

また、原告は、原告が原告所有地を取得した当時、本件私道の幅員は、広いところで約ニメートル、狭いところでも一・八メートルあったが、A、D及びEが、塀を改築した際、その塀を一五センチメートルないし三〇センチメートルくらい本件私道にせり出したため、本件私道の幅員が現況のように狭くなったと主張する。

A、D及びEが、塀を改築したことが認められないではないが、同人らが、ことさらにその所有地から本件私道部分にはみ出して、その塀を改築し、そのために本件私道の幅員が狭くなったという事実を認めることはできないし、近隣住民からその旨の異議が述べられたという事実も存しない。加えて、前記認定のとおり、本件私道の幅員が、本件指定処分当時に一・八メートルあったと認めることはできないから、原告の右主張も、採用できない。

三  右のとおり、本件指定処分当時、本件私道が、浦和市施行細則の定める幅員の要件を具備していると認めることはできないので、浦和市長の指定処分が存在する二項道路であることの確認を求める原告の本訴請求は、理由がない。

四  よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 星野雅紀 裁判官 白井幸夫 裁判官 蛭川明彦)

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